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レモンの余韻を重ねたミルクレープ

断面に現れるのは、何層にも重なったクレープとクリーム。
薄く、丁寧に焼き上げた生地が美しいリズムを描き、ひとつひとつの層が均一でありながら、どこかやわらかい表情を持っています。

フォークを入れてひと口すくうと、しっとりとしたクレープが軽やかにほどけ、舌の上でゆっくりと広がっていきます。
最初に感じるのは、生地のやさしい香ばしさ。
全粒粉の穏やかな風味と、焦がしバターのコクが重なり、ほんのりとした甘みとともに、静かに味の土台をつくります。

そしてそのあとに、すぐに訪れるのがレモンの存在。
ただ爽やかなだけではない、しっかりと輪郭を持った酸味が、口の中にすっと広がります。

マスカルポーネのミルキーなコクがまず舌を包み込み、そこにサワークリームの軽やかな酸味が重なり、さらにレモンの果汁が持つ澄んだ酸味が、全体をきゅっと引き締めていきます。

そして、このデザートの一番の特徴でもある、レモンの皮の存在。
細かく刻んだレモンゼストがクリームの中に散りばめられており、噛むたびにふっと弾けるように香りが広がります。

その瞬間、鼻へ抜けていくのは、フレッシュでありながらどこか奥行きのある柑橘の香り。
そして舌の奥に残るのは、ほんのわずかな苦味。

この苦味があることで、ただ甘くて爽やかなだけでは終わらない、立体的で大人な味わいに仕上がっています。
酸味だけではない、香りだけでもない、“皮ごと味わうレモン”の魅力をしっかりと感じていただける構成です。

さらに層の中には、口どけのよいホワイトチョコレートクリームを忍ばせています。
なめらかに溶けていくやさしい甘さが、レモンの酸味と皮の苦味をやわらかく包み込み、全体のバランスを整えてくれます。

ひと口ごとに感じる、味の重なり。
最初はやさしい甘さ、次に広がる酸味、そしてあとから静かに残るほろ苦さ。

食べ進めるほどに、その順番や感じ方が少しずつ変わり、まるで味わいが流れていくような感覚になります。

しっとり、なめらか、とろける。
そしてふっと抜ける香りと、舌に残るわずかな苦味。

この小さな変化の積み重ねが、一皿の中に深い余韻を生み出しています。

仕上げには、レモンチップをひとつ。
軽く噛むとカリッとした食感のあとに、凝縮されたレモンの風味とほのかな苦味が広がり、もう一度味わいを引き締めてくれます。

さらに削りたてのレモンゼストを散らし、ひと口ごとにフレッシュな香りが立ち上がるように。
ほんのり添えたタイムの香りが、全体に自然な奥行きを加え、最後の余韻を静かに整えます。

冷たいお皿の上で、ゆっくりとほどけていく層。
フォークを運ぶたびに変わる味わい。

軽やかでありながら、しっかりと記憶に残る一皿。

口に入れた瞬間のなめらかさ、
重なり合うコクと酸味、
そして最後に静かに残る、レモンの皮のほろ苦い余韻。

そのすべてを楽しんでいただけるように仕立てた、
“レモンを丸ごと味わう”ミルクレープです。